高校球児のあいさつが気になる
第101回目の甲子園が今年も熱闘の余韻を残したままその幕を閉じた。
例年通り今夏もワイドショーは連日甲子園の話題で持ちきりだった。
甲子園はもはやスイカ、風鈴に並ぶ夏の風物詩であり、日本国民には欠かせないものなのだろう。
普段野球をまったく見ないという人でも、汗をだらだら流しながら必死で投球し続けるピッチャーに胸を打たれるし、急に物知り顔で優勝校を予想したりする。
高校球児たちのまばゆい姿は誰にとっても等しく輝いて見えるものだ。
甲子園がなぜあんなにも感動的なのか。
ハイレベルなプレーのほかにも理由がある。
高校球児たちの立ち居振る舞いだ。
丸刈り姿にハキハキした行動、さわやかな笑顔、丁寧な言葉遣い。
高校球児たちの姿はまるで礼儀正しさが人間の皮をかぶったかのよう。
青春をすべて野球に捧げた青年たちの姿は俺たちが忘れてしまった何かを思い出させてくれる。
ただ一つ、高校生の頃から気になることがある。
“高校球児のあいさつが独特すぎる”ということだ。
一般の人が言う「こんにちは」は文字通り発音されるのだが、高校球児たちの「こんにちは」はひと味もふた味も違う。
高校球児たちの口から発せられる「こんにちは」を正しく記述するならば
ォンチャァァーーーッ!!(低音ボイス)
である。
念のため言っておくが、誇張やウソは全く含まず
ォンチャァァーーッ!!なのだ。
一言一句違わずォンチャァァーーッ。
だれが聞いてもォンチャァァーーッである。
ノンフィクション、いわばドキュメンタリーのォンチャァァーーッ。
本人たちはこんにちはと言っているつもりでも実際は
ォンチャァァーーッなのだ。
正真正銘のォンチャァァーーッ。
ォンチャァァーーッ。
なんとも味わい深い響きである。
「こんにちは」の域を完全に脱したニュースタイルのあいさつ。
あいさつひとつでコイツは野球部だ!と察知できるほどの強烈なアイデンティティ。
脱帽だ。
ほかの生徒たちが何気なくスルーする学校関係者や近隣住民のかたたちにも野球部員はあいさつする。
ただし、ォンチャァァーーッである。
向かいから歩いてくる学校関係者に対して体をきちんと正面に向けて足を止め、やや深めのおじぎをしながら大きな声であいさつ。
ォンチャァァーーッ!!(低音ボイス)
なんのこっちゃわからんのである。
ちなみにこの挨拶、下級生より上級生の方がォンチャァァーーッ度が高い。
入学して間もない1年生などは
「こんちゃーーース!」
というまだまだ「こんにちは」の体を保った挨拶をするが、学年が2年、3年と上がるたびにォンチャァァーーッに近づいていく。
年功序列のヒエラルキーは同時にォンチャァァーーッのヒエラルキーでもあるのだ。
「こんにちは」から派生して誕生したォンチャァァーーッは先輩から後輩へ、またその後輩からそのまた後輩へと受け継がれていく。
3年たってしまえば野球部はまったく新しいメンバーと入れ替わってしまう一方、先代たちが後輩へつないできたォンチャァァーーッのバトン。
脈々と受け継がれ、歴史をつくりあげるォンチャァァーーッ。
圧巻である。
ここまでいじりにいじっておいて何をいまさらと思われるかもしれないが、俺はこの野球部独特のあいさつが好きだ。
野球部独特のカルチャーみたいでイイ感じ(ほかに形容する言葉がみつからなかった)だし、そういう独自性はユニークだからだ。
ただ、この挨拶が礼儀正しいかどうかはまた別の話だと思う。
野球部は超礼儀ただしくてサイコーだよね。という風潮がある。
本当にそう思っているのだろうか?
ォンチャァァーーッをしている社会人は俺の周りにひとりもいない。
みんな「こんにちは」と発音しているし、正面を向いて足を止めている人もあまり見かけない。
もし本気でォンチャァァーーッの高校球児が礼儀正しいというのであればビジネスシーンでも積極的にォンチャァァーーッを活用すべきなのだ。
以下、ォンチャァァーーッ他様々な野球部のあいさつを活用したシミュレーション
Aさん「ォンチャァァーーッ!!」
Bさん「あ、どうもAさん。ォンチャァァーーッ!!」
A「Bさん先日はどうもァァッシャーーーー!!(ありがとうございました)」
B「こちらこそァァッシャ。うちの部下がご迷惑をおかけしたみたいでシャッセーーーーン!!(すみません)」
A「とんでもないです。今後ともぜひよろしくォンシャーーーーァスゥ!!(お願いします)」
B「ではシッッシャーース!!(失礼します)」
今日は以上です。
みなさんいつも読んでくれてァァッシャーーーー!!